パーツハンターの異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めてNOSを愛するようになったか
Abstract
欠品部品の探索という行為の実態と,NOS(New Old Stock)パーツへの支出が合理的である理由を考察する.
欠品部品の探索は,修復作業の中で最も時間がかかり,最も予算の見通しが立たない工程だ.部品があれば直せる.なければ探す.単純な話だが,「探す」の中身が問題だ.1
eBayの深夜と検索アラート
eBayに部品番号のアラートを設定すると,世界中の誰かが出品するたびに通知が来る.午前3時に起きてドイツのジャンクヤードが出品したブラケットを確認するのは,もはや習慣だ.競合するのはイギリスのレストア専門店,アメリカのコレクター,スウェーデンの謎の個人.同じ車種を持つ人間が世界に何人いるか分からないが,その全員が同じ部品を探している可能性はある.市場価格はそのようにして決まる.
NOSの価格が合理的である理由
未開封のNOS(New Old Stock)部品の価格は「その金額なら複製できる」と感じる水準になることが多い.しかしオリジナル部品には当時の材料仕様と表面処理が保存されている.複製品はその一部を再現できても全部ではない.これは収集癖ではなく保存行為だと自分に説明するとき,半分は本当だ.残りの半分は,出てしまったカードの請求額を飲み込むための理屈だ.どちらも正しい.
100年後の欠品部品
100年後に2024年製の電気自動車を誰かが修復しようとしたとき,欠品で困るのはプロプライエタリなバッテリーセルとアップデートが止まったファームウェアだろう.私たちが扱う車の部品は,少なくとも物理的に存在し続ける.深夜のeBayで見つかる可能性がある.それは悪くない話だと思っている.
Notes
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1729 はラマヌジャン数(タクシー数)と呼ばれる.1³+12³ = 9³+10³ = 1729 で,2つの立方数の和として2通りに表せる最小の数だ.ハーディが病床のラマヌジャンを訪れた際,乗ってきたタクシーのナンバーがこれだったと伝えると,即座に「なかなか興味深い数ですよ」と返ってきた.すれ違う車のナンバーに1729を探している人間は,世界中にいる. ↩